二日間にわたる女子高の歯科健診を今日終了。
約600人の口の中を診た・・・・疲れた。
この学校を20年以上、診続けているが、虫歯の数は年々減少してきている。
僕が診ているのは、進学校なので、一般集団よりきれいな歯の持ち主の子供が多い。
ある程度裕福で、知識階級(やや語弊があろうが)の家庭が大多数を占めているせいだと思う。
学校歯科医を担当して毎年のように悩むのが、子供達の歯列・咬合の問題だ。
約10年前から、健診で歯列・咬合をスクリーニングするよう法で定められた。
昔は虫歯を見つけるだけで良かったのに・・・・
当然、虫歯がゼロでも、歯並びが悪ければ、家庭にその通知を出すことになる。
通知の意味は、「歯列・咬合に問題があります。専門医の精査を要す」 なのですが、「お子さんの歯並びは悪いので、今すぐ矯正治療が必要です」 と読み違える人が、実際は多いのではないか?
矯正治療は、ごく稀なケースを除いて保険外になるから、治療費が大変高額になる。
経済的理由から、全ての子供が受けられる治療ではない。
そこで、通知をもらった保護者は、矯正治療の経験の少ない一般の歯科医から「安くやりましょう」と囁かれ、矯正?を始めてしまうケースも結構ある。
しかし、本来、矯正治療の技術習得には、相当のトレーニングと長年の経験を要する。
未熟な歯科医が非抜歯で discrepancy(いわゆる歯並びのガタガタ) の解消のみを無理して行い、一番重要であるべき咬合を破壊してしまっている症例を多く見てきた。
素人目には歯並びがきれいに治っても、始める前より上下の噛み合わせが悲惨になっている。
僕が歯列不正を指摘したばっかりに、この子を不幸にしてしまった、と悔やむことも少なからずあるのだ。
誤解をされると困るので、断っておくが、僕は矯正歯科医であるが全ての症例を完璧に治せる名医ではない。上から目線で書いているつもりはない。
僕は、普通ランクの矯正歯科医だ。
日々の研鑽が必要だと思っている。
だから、健診で大勢の子供達の矯正治療例を見て、この子の担当医は僕より凄いなと謙虚に感心することも多々ある。
矯正歯科を標榜している歯医者の中でさえ、その腕はまちまちなのだ。
ましてや、シロウトである患者さんにとって、どの歯医者が「いい歯医者」なのか「悪い歯医者」なのか判断するすべもない。
「あなたのお子さんの歯並びは悪いですよ」 と学校から言われた親は、いきなり荒海の中に投げ出され、迷うばかりであろう。
詰まるところ、学校歯科健診で不正咬合をスクリーニングし、それを指摘された子供に、専門医の精査を勧めるシステムでありながら、管轄の文科省はその「専門医」がどういうものであるかを示していない点が問題なのです。
私は日本矯正歯科学会の認定医ですが、それをもって「専門医」とするなら、学会に所属しないで矯正治療に研鑽を積んできた歯科医をオミットすることになる。それはそれでシステムとして問題。
もし仮に学会認定医をもって「専門医」としたとしても、認定医は地方では少ないであろうから、地方の子供らは困ることになる。
矯正歯科医の技量の質を国が担保できないのであれば、咬合の善し悪しの検査は意味をなさないのではなかろうか。
そう思うわけであります。
困った問題だ。
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