霞町物語
J-WAVE で浅田次郎の「霞町物語」の朗読番組をたまたま聴き、興味を持ったので買って読んでみた。
いうなれば、「少年時代の部」と「青春時代の部」の2部構成から成る短編集。
青春時代、日比谷高校であろうところの生徒のヤンチャぶりは、映画「アメリカン・グラフィティー」を彷彿させ、痛快で甘酸っぱい世界に誘ってくれる。
東大紛争あたり、日比谷高校の生徒といえば、庄司薫「赤ずきんちゃん気をつけて」の世界が脳裏に浮かんでくるが、この本の主人公は同時代でありながら、全く違うタイプの不良である。日比谷高生が、車を乗り回し、夜な夜な六本木のディスコで酒を飲み、女の子をナンパして湘南のホテルにしけこんでいた????
浅田次郎は、1951年生まれだから、庄司薫とは世代が異なる。大部分はフィクションであろうが、このように信じられない設定でも、作者の筆にかかると妙にリアリティーを感じる。田舎者の私が、まさに青春時代、夢描いた憧れの東京の風俗だ。
もし、この本が、放蕩息子のエピソードだけに終始していたら、読者から共感はえられなかっただろう。作者がうまいのは、少年時代の家族風景の短編をうまく交互に配置しているところにある。
特に祖母を描いた「雛の花」は、圧巻で、声に出して読みたくなる名文だ。
読んでいて、涙が滲んできた。
「笑うときは大口あけて笑う。ワッハッハ。そんで、泣きたくなったら奥歯でグイと噛んで、辛抱する。男は毎日それのくり返し。一生それのくり返し・・・・」
こんな名台詞を吐く祖父を描いた「卒業写真」も素晴らしい。
名著です。
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コメント
おはようございます。
あまり読書は得意ではありませんが、浅田次郎の作品は何冊か読みました。
東大紛争時代、学生で東京に居た事もあってか、なんとなく
好きな作品が多い。
投稿: yanbaru | 2012年5月30日 (水) 09時38分
yanbaru さん、コメントありがとうございます。
あの時代の学生運動っていったい何だったのか、何を残したのか・・・とても、興味があります。
投稿: はーびー | 2012年5月30日 (水) 10時07分